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3 10, 2006

正しい歴史認識って何?(3)

 『正しい歴史認識って何?(2)』の続き、というかまとめです。

【あとがき】

 本来、この部分は今回のテーマと関係ないのですが、そもそも
この教科書が日本語訳された意図に関わる部分なので取り上げて
みます。

『韓国の歴史教科書の内容はいうまでもなく韓国国民の歴史観
 形成に決定的な役割を果たしていますが、それは同時に日本
 国民の歴史観形成にも深くかかわっていると考えられます。』

 なに?。どうして関わっているの?。正直サッパリわからなか
ったのですが、以下の文言でそれが明らかになります。

『・・韓国での民主化の進展に対し、日本では反動イデオロー
 グたちの策動が目立ち、かつての日本の侵略行為を正当化し
 ようとする意図をむきだしにしています。これは必ずしも偶
 然の動向ではありますまい。』

 つまり、こうした反動的な意図を打ち砕くためには韓国の主張
を全面的に受け入れる、それによって「日本国民の歴史観形成に
も深くかかわって」いるという主張のようです。私に言わせれば
本教科書の訳者たちが、自分達の歴史観を日本にも浸透させよう
とする意図をいかにも自然にそうなっているかのように偽ってる
だけです(笑)。もっと正確に言えば、「日本国民の歴史観形成に
も深くかかわっていると考えられます」ではなくて、「日本国民
の歴史観形成に深くかかわらせたいと考えています」ということ
でしょう。

 仮にも歴史家ともあろう者が、自分達と違う歴史観を持つ人達
のことを軽々に“反動イデオローグたち”等と呼ぶべきではない
でしょう。第一、こういう呼び方をした時点でその人が何らかの
政治的立場にある言い換えれば中立の立場にはないということを
自ら暴露してしまっている訳ですから、自らの著書で言うのなら
ともかく他国のものであるとはいえ教科書のあとがきに書く文章
としては全くもって不適当であると言わざるを得ません。

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 歴史学者である秦郁彦氏はその著書『現代史の争点』の中で、
歴史家というものについて、以下のように書いています。

『歴史家(プロでもアマでも)の任務は正確な史実を探求し因果
 関係を明らかにして、読者へ提供することにある、と私は信
 じている。そのためにはクールな心境で主題と素直に取り組
 む必要があり、左右を問わず政治的イデオロギーに奉仕する
 ものであってはならない。』(P.252)

 まさしくこうであって欲しいもの。この一文は、もともと右派
史観の中村粲(あきら)氏とのやりとりを巡る『歴史論争の作法と
節度』という項におけるものなのですが、その後に「左派もほと
んど同じ」例として、なんと本教科書の訳者でもある君島和彦氏
が取り上げられています。あぁ、なるほどねぇ~(笑)。よくよく
見ると、氏名の直後に‘家永教科書裁判の家永側事務局長格’と
カッコ書きで書いてあるし・・。あぁ、やっぱりな~(爆)。
-----------------------------

 ただ、最後のほうにキチンと翻訳の目的が書かれているのは、
目的はともかくとして(笑)、偽ってはいないという点では一応の
評価をしたいと思います(以下が該当部分です)。

『あえてこの翻訳にのり出したのは、韓国の歴史教育の内容を
 とおして、日本の歴史教育の改善にも資したいと考えたから
 でもあります。』

 まぁ、こういった人達のおかげで韓国の歴史教科書の歪さを実
際に知ることがこうして出来た訳ですから、そうした点で彼らの
努力には感謝したい!と表明させて頂きます。出来れば「日本の
歴史教育の内容をとおして、韓国の歴史教育の改善にも資したい
と考え」て行動して頂ければ、なおのこと良いのですけど(笑)。

 ここまでで、ひと通りは見てきました。全体的に言えることは
やはり“Ⅰ 韓国史の正しい理解”なる項目が見て分かるとおり
最も大きな項目分け(単元)の中で独立した項目の1つとしてわざ
わざ設けられている点が、なんと言っても異様ですね。そして、
そのなかで繰り返し出てくる“正しい(若しくは正しく)”という
言葉。

 常識的に考えれば、教科書で教えるような内容は基本的に学問
的‘裏づけ’がある内容を掲載する訳ですから、それをいちいち
“正しく理解”だの“正しい歴史認識”だのと(教科書の)冒頭で
明言することなど全く不要のはず?。それとも、韓国では国語や
算数の教科書にも同様の‘前置き’があるんでしょうか?(笑)。
それとも、前もってこれだけ言っておかないと学習する内容それ
自体が事実であると思われないぐらい怪しい内容が記載されてい
るということを意識しての‘予防措置’なのでしょうか・・?。
やはりこういう文言をこういう項目まで設けて繰り返し用いると
いうのは、「韓国国民にとってあるべき歴史観(歴史認識)を何が
何でも国民に植え付けよう!。」という韓国政府の目的があって
のことだろうと断定してよいでしょう。

 因みに日本の歴史教科書について同様の記述があるのか、書店
でちょっと確かめてみました(立ち読みってヤツです)。出来れば
最もタイムリーな『新しい歴史教科書』でもあれば本当は良かっ
たのですが残念ながら(?)なかったので、私が高校で歴史を学習
していた以前からメジャーな存在であったであろう山川出版社の
『詳説 日本史』をちょっと覗いてみました。結論から言えば、
今まで見てきた部分に相当する部分は、たった1ページしかあり
ません(笑)。当然の事ながら“正しい”だの“歴史認識”だのと
いった言葉は一切ありません。強いて言えば『歴史の流れを学ん
で欲しい』と言ってる程度です。個人的には、もう少し学習する
目的を具体的に記述しても良いのでは?とは思いますが、常識的
な文章であるということだけは、自信を持って言えます。

 もう1つ。そもそも“歴史認識”って一体なんでしょうか?。
この言葉自体にも非常に引っかかるものがあります。少なくても
私の知る限り、日本人が歴史というものをどう捉えているか?と
いった意味で用いる言葉は“歴史観”であり決して“歴史認識”
ではないはずです。自分の家にある『大辞林(第二版)』[三省堂]
で“歴史”という言葉そしてそこに付随して記載されている歴史
を接頭語にした言葉を見渡しても、やはり“歴史観”はあります
が“歴史認識”はありません。
-----------------------------
【歴史観】歴史的世界の構造やその変化・発展についての1つ
     の体系的見解。
-----------------------------
見解という以上、歴史観という言葉そのものには正誤や善悪など
の属性は備わっていないことが分かります。複数の歴史観が並存
することも、理屈の上では全く問題ない訳です。実際、歴史観は
史観とも言いますが、史観は歴史学において複数存在しますし、
それらは対立する部分は存在しても完全な排他的関係ではありま
せんし、場合によってはむしろ補完的関係にあるとも言って良い
ぐらいです。

 では、一方の“歴史認識”はどうでしょう?。取り敢えず歴史
の二文字を取り払い“認識”という言葉がどういう意味なのかを
同じく大辞林の記載で確認してみます。
-----------------------------
【認識】①物事を見分け、本質を理解し、正しく判断すること。
     また、そうする心のはたらき。
    ②[哲学用語なので省略]
-----------------------------
 う~ん?。認識には最初から正誤を伴った意味が備わっている
ということですね。歴史観とは違って歴史認識とは別の歴史認識
つまり言い方を変えれば別の価値基準による判断或いは価値基準
が同じでも判断能力の違い等による別の判断(結果)とは、基本的
に相容れないものだということになります。だって、歴史認識を
持ち出した時点で、その持ち出した人にとってはそれ以外の歴史
認識はほぼ絶対に正しくないはずなのですから。そして、自らの
歴史認識に拘る人がそれ以外の歴史認識を持つ人との問題を解決
しようとすれば、相手に自分の歴史認識を認めさせるしか方法が
ない訳です(或いは相手の歴史認識を全面的に受け入れるか?)。

 これだけ見ていくと、その性質上妥協の余地が限りなく小さい
歴史認識というものを政治や外交に持ち出すということ自体が、
如何にナンセンスなことであるかを(事前に分かり切っていた事
とは言え(笑))改めて痛感します。そして、韓国(や中国)が歴史
問題を持ち出す際、“歴史観”という言葉は決して用いずに常に
“歴史認識”という言葉を使うこと、それに伴う非妥協的な態度
が必然であるということ、がよく理解出来ます。

 ようやく終わった・・(苦笑)。これを読んで下さったかたにも
貴重な時間を割いて頂いたことに対して感謝したいと思います。

 まぁしかし、それにしてもどう贔屓目に見ても韓国の歴史教育
というものの位置付けやそのあり方には全くもって納得出来ない
し、(それだけなら未だしも)そのような歴史教育から来るところ
の“正しい歴史認識”なぞを過去の日本の侵略にかこつけて21
世紀にもなって未だに‘被害者ヅラ’をしながら押し付けてくる
国家&国家首脳には、今更ながら呆れてモノが言えない!としか
言いようが無いです。

 正直これだけの長文ですけど、所詮はシロートの解釈ですので
いろいろとイチャモンのつけどころがあろうかとは思いますが、
多分コメントがついても十分に納得出来るレスは出来ないと思い
ますので、予め御了承下さい。勿論、批判的なコメントそれ自体
を否定するものでは決してありません。

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コメント

雷電さん

お疲れ様です、えらい力作ですね。

正しい歴史認識って言い方、まあある意味これほど横暴な言い方も無いですな。(笑)

まあ仰るように、彼らの言う正しい歴史認識とは、あくまでも政治問題として利用されているだけですからなぁ。
日本も付き合いきれない部分は多いですな。

トップで紹介したリンク先に、韓国の子供が書いた日本の絵がありますが、これが彼らの言う正しい歴史認識の果ての結果であるなら、何を況わんや、ですな。(笑)

投稿: akinopapa | 3 17, 2006 01:26

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